Phenomena in Nursing
Online ISSN : 2432-1958
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急性冠症候群の短期再発要因に関する症例対照研究
濵上 亜希子 谷田 恵子加治 秀介
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2019 年 3 巻 1 号 p. R1-R13

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抄録

【目的】  本研究の目的は,急性冠症候群(Acute Coronary Syndrome: ACS)発症後,短期に再発した患者と,再発なく長期に療養生活を継続できている患者を対象に,治療内容,臨床検査データ,内服状況だけではなく,睡眠状況や歯科衛生等の変数についても比較分析し,短期再発の引き金となっている要因を明らかにすることである。 【方法】 日本循環器学会認定循環器専門医が勤務しており,ACSに対する急性期治療が行われている3ヵ所の病院の外来に通院または入院しているACSの既往のある患者50名を,4年以内に再発した群(再発群)と4年以上一度も再発を起こしていない群(非再発群)に分け,内服治療状況,生理・生化学データ,生活習慣,推奨されている値や習慣の達成率や知識量について診療録と面接により収集した。それらについて両群で差があるかを,量的変数に関してはt検定,質的変数についてはχ2検定を行い分析した。本研究は所属大学に設置されている研究倫理委委員会の承認を得て実施した。 【結果】 再発群は非再発群に比べ,血清LDLコレステロール値が高く血清HDLコレステロール値が低い傾向にあり,LH比に有意差を認めた。また全対象者において,再発予防の目標値である血清LDLコレステロール70mg/dl以下を達成できているのは26%と少なかった。歯磨きや睡眠状況を含むその他の生活習慣については有意な差は認めなかった。内服薬に関しては,スタチンは全対象者の84%に,抗血小板薬または抗凝固薬は全対象者の96%に処方されており,再発群は非再発群に比べβ遮断薬の処方率が低い傾向にあった。再発予防に関する知識については,再発群のほうが拡張期血圧の推奨値を知っている者が少ないという結果であったが,ほとんどの項目において両群ともに予防に関する知識が乏しかった。 【結論】 ACSの短期再発予防には脂質管理に対する支援が有用であり,その評価指標にはLH比を用いることが重要であることに加え,一般的な基準と大きく異なる血清LDLコレステロール70mg/dl以下という目標に対しては,局所障害ではないACSに対し,70mg/dl以下を維持することで得られるプラーク退縮効果について患者自身が理解し,適切な食事療法や確実な内服が継続できるよう支援する必要があることが推察された。また,これらの支援を行う際には,ACSを発症したという事実だけでは患者が自ら健康を求める行動には繋がりにくいということを意識し,患者にとってACSという病いの体験がどのような意味をもっているのかに関心を寄せながら,支援を継続していくことが重要である。

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© 2019 公立大学法人兵庫県立大学
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