抄録
【目的】
著者らは,大学教員が中心となって実施する「まちの保健室」の一環としてこころの健康相談室を開設し,地域で生活し精神健康上の不安や困難をもつ人やその家族を対象として,短期的な相談支援を行うこととした。本研究は,精神看護を専門とする看護師によるこころの健康相談室の運営枠組みを作成し,利用者のニーズや果たしうる役割,課題について予備的に検討することを目的とした。
【方法】
初回面接終了時に自記式調査票による調査を行い,満足度などを評価した。また,相談内容や支援内容を記録してまとめた。
【結果】
2017年3月から2019年2月までの研究期間中に分析対象者となったのは6名であった。性別は男性1名,女性5名であり,年代は20歳代から60歳代にわたっていた。4名からは主に自身の精神健康に関する相談,2名からは家族への対応についての相談があった。それに対して,思いの傾聴,すでに行えていることや自身で対処しようとしていることへの肯定的なフィードバック,スモールステップ表や不調になった時のためのアクションプラン作成の提案,現在の状況の分析,家族との関わり方についての助言,相談者自身の傾向についての振り返りなど,提供した支援の方法や内容も多岐にわたった。
【結論】
分析対象者の満足度は概ね高く,全体としてはニーズに沿った相談支援を提供できていたと考えられる。一方で,こころの健康相談室としてどこまで支援を継続するか,他機関との連携,相談員のスキルの獲得・向上,より効果的な広報などは,今後の検討課題であると考えられた。