Phenomena in Nursing
Online ISSN : 2432-1958
Print ISSN : 2432-4914
3 巻, 1 号
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  • - 理論構築の発展についての現状 -
    小野 博史, 中西 永子, 濵上 亜希子, 坂下 玲子
    2019 年 3 巻 1 号 p. G1-G13
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/07
    ジャーナル フリー
    【目的】 看護学の発展のためには研究や実践と密接にリンクする理論が必要であることから, Situation Specific Theory(状況特定理論 以下,SST)という新しいタイプの理論が提案され,20年が経った。本研究では文献レビューを通して,SSTに関する論文数や内容の変遷,構築手法や活用された情報源を分析することを通じてSST構築の発展経過を明らかにするとともに,SST構築の今後の展望を得ることを目的とする。 【方法】 CINAHL,PubMed,医学中央雑誌を用い,国外誌には“situation specific theory” situation specific theories”をキーワードとし,国内誌にはさらに「状況特定理論」を加えて検索を行い,88件の論文が抽出された。スクリーニングを経て得られた50件の論文を対象とし,論文の発行年や論文内容で分類を行った。さらにSSTを構築した論文に対して,理論の構築手法と活用した情報源の分析を行った。 【結果】 英語論文は47件あり,理論構築,概念分析,理論の下位レベル概念の明確化,理論検証,理論を枠組みとした研究,総説・解説の6種類に分類された。また,論文の公表数は年代を経るにつれて増加していた。SSTとして構築された理論が検証され,研究の枠組みとして使われ,看護学の知の構築に貢献している状況が明らかとなった。SSTの構築が行われた論文は23件で,いずれも特定の領域や対象に限局された現象を取り扱っていた。構築手法としては統合的アプローチが最も多かったが,それ以外の手法を用いた論文も認めた。構築の情報源として,既存の理論,研究データ,文献レビューが多く活用されていた一方で,実践経験の活用は少なかった。 【結論】 SSTは数を増やし続けており,理論検証やSSTを枠組みとした研究もおこなわれ,これから看護学領域内での認識が拡大していくものと予想される。また,統合的アプローチ以外の構築手法も出現していることから,今後はより多様なアプローチを通して,より多くのSSTが生み出されていくことが期待される。
  • 谷田 恵子, 濵上 亜希子, 森 舞子
    2019 年 3 巻 1 号 p. O1-O10
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/25
    ジャーナル フリー
    【目的】 A市に住む高齢者がどのような体温計を使用しているか,腋窩体温計の場合は正しく挿入できているか,測定前に汗を拭きとっているか,使用後体温計の保清を行っているかなどを明らかにすることを目的として質問紙調査を行った。 【方法】 データ収集は,高齢者のレクリエーションや生涯教育および健康の保持増進等のためにA市が設置している施設を利用している人や,地域の高年クラブの会員などを対象者として2015年7~9月に実施した。実施に先立ち,兵庫県立大学看護学部・地域ケア開発研究所研究倫理委員会に申請し,承認を得た。調査票は留め置き法と郵送法で回収した。体温計使用の実態が性別および前期・後期高齢者の区分で差があるかと,健康情報の入手方法と体温計使用の方法との関連をχ2検定と残差分析により確認した。 【結果】 745名に回答を依頼し,627名から回答を得(回収率84.2%),データクリーニングを行い515名分(男性39.6%,73.7±5.4歳,65~91歳)のデータを分析に用いた。416人(80.8%)が電子式腋窩用体温計を,78人(15.1%)が水銀式体温計を使用していた。体温計の挿入方向の質問を回答した者のうち正答を選択していたのは88名(19.6%)で,その中で健康情報を健康セミナーで得ていると回答した割合は,挿入方向が誤答の群よりも高かった。測定前に腋汗を拭く行為の実施率は78.6%,使用後の体温計の保清行為実施率は34.6%で,前期高齢期の男性群ではこれらの行為の実施率が他群よりも有意に低かった。 【結論】 医療従事者は、望ましい方法で体温を測定できている高齢者の割合が2割未満にすぎないことや,前期高齢男性は体温計の保清行動の実施率が女性や後期高齢男性よりも低いこと,水銀体温計が家庭に残っていることを意識しながら,対象に関わっていく必要性が示唆された。
  • 千葉 理恵, 川田 美和, 武内 玲, 竹原 歩, 小澤 亜希絵, 船越 明子
    2019 年 3 巻 1 号 p. P1-P9
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/03
    ジャーナル フリー
    【目的】 著者らは,大学教員が中心となって実施する「まちの保健室」の一環としてこころの健康相談室を開設し,地域で生活し精神健康上の不安や困難をもつ人やその家族を対象として,短期的な相談支援を行うこととした。本研究は,精神看護を専門とする看護師によるこころの健康相談室の運営枠組みを作成し,利用者のニーズや果たしうる役割,課題について予備的に検討することを目的とした。 【方法】 初回面接終了時に自記式調査票による調査を行い,満足度などを評価した。また,相談内容や支援内容を記録してまとめた。 【結果】 2017年3月から2019年2月までの研究期間中に分析対象者となったのは6名であった。性別は男性1名,女性5名であり,年代は20歳代から60歳代にわたっていた。4名からは主に自身の精神健康に関する相談,2名からは家族への対応についての相談があった。それに対して,思いの傾聴,すでに行えていることや自身で対処しようとしていることへの肯定的なフィードバック,スモールステップ表や不調になった時のためのアクションプラン作成の提案,現在の状況の分析,家族との関わり方についての助言,相談者自身の傾向についての振り返りなど,提供した支援の方法や内容も多岐にわたった。 【結論】 分析対象者の満足度は概ね高く,全体としてはニーズに沿った相談支援を提供できていたと考えられる。一方で,こころの健康相談室としてどこまで支援を継続するか,他機関との連携,相談員のスキルの獲得・向上,より効果的な広報などは,今後の検討課題であると考えられた。
  • 濵上 亜希子, 谷田 恵子, 加治 秀介
    2019 年 3 巻 1 号 p. R1-R13
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/12
    ジャーナル フリー
    【目的】  本研究の目的は,急性冠症候群(Acute Coronary Syndrome: ACS)発症後,短期に再発した患者と,再発なく長期に療養生活を継続できている患者を対象に,治療内容,臨床検査データ,内服状況だけではなく,睡眠状況や歯科衛生等の変数についても比較分析し,短期再発の引き金となっている要因を明らかにすることである。 【方法】 日本循環器学会認定循環器専門医が勤務しており,ACSに対する急性期治療が行われている3ヵ所の病院の外来に通院または入院しているACSの既往のある患者50名を,4年以内に再発した群(再発群)と4年以上一度も再発を起こしていない群(非再発群)に分け,内服治療状況,生理・生化学データ,生活習慣,推奨されている値や習慣の達成率や知識量について診療録と面接により収集した。それらについて両群で差があるかを,量的変数に関してはt検定,質的変数についてはχ2検定を行い分析した。本研究は所属大学に設置されている研究倫理委委員会の承認を得て実施した。 【結果】 再発群は非再発群に比べ,血清LDLコレステロール値が高く血清HDLコレステロール値が低い傾向にあり,LH比に有意差を認めた。また全対象者において,再発予防の目標値である血清LDLコレステロール70mg/dl以下を達成できているのは26%と少なかった。歯磨きや睡眠状況を含むその他の生活習慣については有意な差は認めなかった。内服薬に関しては,スタチンは全対象者の84%に,抗血小板薬または抗凝固薬は全対象者の96%に処方されており,再発群は非再発群に比べβ遮断薬の処方率が低い傾向にあった。再発予防に関する知識については,再発群のほうが拡張期血圧の推奨値を知っている者が少ないという結果であったが,ほとんどの項目において両群ともに予防に関する知識が乏しかった。 【結論】 ACSの短期再発予防には脂質管理に対する支援が有用であり,その評価指標にはLH比を用いることが重要であることに加え,一般的な基準と大きく異なる血清LDLコレステロール70mg/dl以下という目標に対しては,局所障害ではないACSに対し,70mg/dl以下を維持することで得られるプラーク退縮効果について患者自身が理解し,適切な食事療法や確実な内服が継続できるよう支援する必要があることが推察された。また,これらの支援を行う際には,ACSを発症したという事実だけでは患者が自ら健康を求める行動には繋がりにくいということを意識し,患者にとってACSという病いの体験がどのような意味をもっているのかに関心を寄せながら,支援を継続していくことが重要である。
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