抄録
製造工程における多変数の原因系と多変数の結果系との関連, あるいは製品の多変数の物理特性と多変数の感覚特性との関連を解析するために正準相関分析をよく行う.正準相関分析では, 結果系と原因系の変数群それぞれの線形の総合特性(正準変量)をその相関が各段階で最大となるように求めるが, 結果系に対しては線形の総合特性ではなく, 総合的な多変量のパターンに興味があり, そのパターンが原因系(共変量)xのどの要因でよく説明できるかをしりたい場合も多いと考えられる.本論文は, この目的のための解析方法を提案しており, 本方法によれば相関係数は小さくても, xとyとの間にはある種のクラスター対応関係のあるデータ構造, すなわち, yの多変量空間でデータがいくつかのクラスターに分けられるように分布しており, その各クラスターが対応するxの多変量空間においてもクラスターをなしているというデータ構造が解析でき, 従来の多変量解析手法では把握できなかった構造の解析が可能であることを示している.