抄録
ソフトウェア開発の標準的な開発モデルであるウォータフォールモデルは多くの問題点を抱えているが, それらを解決するソフトウェア開発技術の一つとして, プロトタイピングが定着しつつある.プロトタイピングは, その実施目的に着目した場合, 探査型, 実験型, 進化型の3種類に分類できるが, 探査型・実験型プロトタイピングについての方法論研究はほとんどなされていなかった.そのため実際のソフトウェア開発への適用においては, プロトタイピング本来の効果を引き出せずに失敗する場合も少なくない.本論文では, 探査型・実験型を対象として品質機能展開を用いたプロトタイピング手法を提案する.手法の検討と評価を進めるにあたっては, 探査型・実験型プロトタイピングの適用が有効であるソフトウェア領域の一つとしてスケジューリングシステムを取り上げる.本手法を実際の2つのプロトタイピングに適用することにより, ユーザー要求とプロトタイプ機能のミスマッチ, プロトタイピング作業の長期化といった従来のプロトタイピングの問題点の改善に有効であることを明らかにした.さらに, 幾つかの考察を通して本手法をスケジューリングシステム以外へ幅広く適用していく際の指針についても示した.