2010 年 59 巻 3 号 p. 249-256
単結晶を用いた,立方晶スクッテルダイト化合物PrOs4Sb12の低温及び室温における構造解析の結果を報告する。重い電子系超伝導体であるPrOs4Sb12では,大きめのSbケージに内包されたPrイオンが示す巨大振幅の熱振動“ラットリング”の重要性が示唆され,物性との関係に興味が持たれている。単結晶中性子回折と最大エントロピー法を用いた解析により,従来困難であった希土類イオンの安定位置の詳細や熱振動の非調和性に関して,モデルを用いることなく,実空間での描像を得ることが可能となる。本稿では,ラットリングの可視化に成功したことを示す。