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総説
陸上植物のセシウム吸収・輸送を制御する分子機構
野田 祐作古川 純
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ジャーナル オープンアクセス

2018 年 67 巻 5 号 p. 233-241

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抄録

陸上植物におけるセシウムイオン(Cs+)の輸送は,主に同族元素のカリウムイオン(K+)の輸送系に依存している。土壌からのK+吸収は,土壌溶液中のK+濃度に応じて使い分けられる低親和性及び高親和性輸送機構によって制御されているが,それぞれの機構に属する複数のK+輸送体がCs+も輸送していることが知られている。K+低親和性輸送体の中では内向き整流K+チャネルや電位非依存性陽イオンチャネル型輸送体がCs+吸収に関与し,K+高親和性輸送機構ではKUP/HAK/KT系K+輸送体がCs+輸送の中心的な役割を果たしている。一方,植物体内でのCs+輸送ではこれら吸収に関わる輸送体のファミリーに加え,外向きK+チャネルも関与することが報告されている。また,近年ではCs+挙動のみが変化し,K+の挙動には影響が表れないという現象も報告されるなど,新たなCs+輸送機構も提示されつつある。本稿ではK+の輸送系に依存したCs+輸送機構と新規輸送機構について主要な輸送体の紹介を交えながら解説する。

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