ストロンチウム(Sr)吸着材を構成するチタン酸ナトリウム(ST)の前駆体であるペルオキソチタン錯体(POTC)アニオンをジメチルアミノエチルメタクリレート重合繊維へ繰り返して吸着固定し,これをNaOHと反応させSTに転化・析出することによって,Srイオンを海水中で,高容量で捕集するSr吸着繊維を作製した。10回の繰り返し吸着固定後にNaOHとの反応によって得られる吸着繊維のST担持率は1回の担持によるST担持率18%の1.6倍(29%)に増加した。10回の担持で,人工海水中でのSr飽和吸着容量も1.5倍(2.9 mg-Sr/g)に増えた。
光学フィルタ法は,TDCR測定において,計数効率を変化させる方法の一つである。本研究では,プラスチックフィルムに印刷を行うことで,147Pmの放射能絶対測定を行うための光学フィルタを製作する方法を開発した。この方法は,レーザープリンタによりトナーをプラスチックフィルムに印刷するものである。本法により製作された光学フィルタを用いて147Pmの放射能絶対測定を行うことができた。
埼玉県内の研究用生態園をモデル生態系に選び,2011~2013年にかけて池水,土壌,生物試料中のγ線放出核種(134Cs, 137Cs, 110mAg, 40K)を測定した。生態園から採取した全ての試料から福島第一原子力発電所事故由来の134Cs, 137Cs及び天然の40Kが検出されたが,濃度は試料によって大きく異なった。また,ザリガニから110mAgが検出された(0.11~1.0 Bq/kg生)。池水の137Cs濃度(Bq/kg)に対する各種試料中の137Cs濃度(Bq/kg)比を計算すると5~5400であり,全ての試料で池水より137Csを高濃縮している傾向が明らかとなった。
陸上植物におけるセシウムイオン(Cs+)の輸送は,主に同族元素のカリウムイオン(K+)の輸送系に依存している。土壌からのK+吸収は,土壌溶液中のK+濃度に応じて使い分けられる低親和性及び高親和性輸送機構によって制御されているが,それぞれの機構に属する複数のK+輸送体がCs+も輸送していることが知られている。K+低親和性輸送体の中では内向き整流K+チャネルや電位非依存性陽イオンチャネル型輸送体がCs+吸収に関与し,K+高親和性輸送機構ではKUP/HAK/KT系K+輸送体がCs+輸送の中心的な役割を果たしている。一方,植物体内でのCs+輸送ではこれら吸収に関わる輸送体のファミリーに加え,外向きK+チャネルも関与することが報告されている。また,近年ではCs+挙動のみが変化し,K+の挙動には影響が表れないという現象も報告されるなど,新たなCs+輸送機構も提示されつつある。本稿ではK+の輸送系に依存したCs+輸送機構と新規輸送機構について主要な輸送体の紹介を交えながら解説する。