2023 年 72 巻 3 号 p. 211-217
再生医療の活性化に伴い,幹細胞などの再生医療製品の国際搬送の必要性が高まっている。現状の国際搬送は航空機搬送が主体であるが,空港におけるセキュリティ検査のX線や宇宙放射線による被ばくの影響が懸念される。日本発着国際便による1回の輸送で宇宙放射線が細胞核にヒットする確率は高くはないが,細胞死や癌化といった問題だけでなく,幹細胞に求められる分化能に対する影響を否定することができない。そこで,航空機輸送に伴う低線量被ばくが与える影響の解明と併せて,宇宙放射線を効果的に遮蔽できる搬送容器や搬送システムの開発が必要である。