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強磁場下でのトリチウム電解濃縮の有用性
今泉 洋高篠 静香斎藤 正明山口 貢福井 聡佐藤 孝雄
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2002 年 51 巻 3 号 p. 101-108

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抄録

環境水などのトリチウム濃度の測定には, 一般に液体シンチレーション法が用いられている。この場合, 次の二とおりが一般的である: (1) 試料水を大きなバイアルで長時間, 低バックグラウンド液体シンチレーション計数器を用いて直接測定する; (2) 電気分解法を用いて, 試料水のトリチウム濃度を上げ, それを一般の液体シンチレーション計数器で測定する。しかし, 固体高分子電解質膜を用いた電解法 (SPE電解法) による濃縮では, トリチウム分離係数 (βa) があまり大きくなく, 6前後である。このβaを上げることは, 環境水などのトリチウム濃度の確度を上げることになるため重要である。そこで, 電解に及ぼす強磁場の影響に着目し, SPE電解法に基づく電解装置を磁場発生装置中に設置し, 種々の強磁場下での電解を試みた (0-3T) 。電解装置は, 磁場に対する電解電流の向きが (a) 直角, (b) 向流, (c) 逆流, の3条件になるよう設置した。その結果, 次の三ρが得られた: (a) では, 2T程度までは, βaの上昇が見られたが, 以後は下降傾向になった; (b) では, 3Tまでは, βaの単調上昇が認められ, 特に2T-3T以上では, 指数関数的に上昇した; (c) では, 0-3Tの範囲において, βaに若干の上昇傾向が見られた程度であった。以上から, 次の二つが明らかとなった。 (1) 電解に及ぼす磁場の影響は, 条件によってはかなり大きい, (2) この条件を設定することで, 大きなβaを得ることができる。

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