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肉類の貯蔵に関するボープログラフ的研究 (第14報)
豚肉並びに鶏の蛋白波に及ぼすγ線照射の影響
小原 哲二郎小笠原 八十吉
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1960 年 9 巻 3 号 p. 259-274

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抄録

(1) ポリセロで真空包装したγ線照射豚肉および鶏肉の20°貯蔵過程における水および食塩水抽出液蛋白波に関する実験を行ない, それら蛋白波の波高, 波形並びにcrossing pointに及ぼすγ線照射の影響について比較検討した。
(2) γ線照射直後の照射豚肉および鶏肉の水並びに食塩水抽出液蛋白波の波形は, いずれの照射量の場合にも非照射肉のそれにほぼ近似しており, 著しい変化は認められなかった。けれども高線量に及べば波高はかなり減少していった。NH4OH濃度で示したそのさいのcrossing pointの位置は, γ線照射量の増加するにつれて, 水抽出液では高い方向に, また食塩水抽出液では低い方向に移動した。
(3) 20°貯蔵過程における照射豚肉および鶏肉の水抽出液蛋白波の波形並びにcrossing pointは, 照射量の相違により, 貯蔵の進むにつれて特徴ある変化を示し, 第1波の波高よりも第2波のそれが高くなった。かかる変化の進むにつれて, そのさいのcrossing pointの位置は高い方向に移動して, 240×104r付近の照射量ではその点が認め難くなるものさえあらわれた。これらの結果は水抽出液蛋白質の特性の著しい変化を示している。
(4) 20°貯蔵過程における照射豚肉および鶏肉の食塩水抽出液蛋白波は, いずれの照射量においても, 著しい波形の変化を示さなかった。そのさいのcrossing pointはいずれの貯蔵日数の場合にも, 照射量の増加するにつれてその位置が高くなったが, 240×104r以上では反対にその位置は低くなった。けれどもそれらの変動は著しくなかった。これらの結果は食塩水抽出液蛋白質の特性のゆるやかな変化を示している。
(5) 本実験で得られた諸結果は牛肉におけるそれらとよく一致した傾向を示した。
終りに臨み種々ご助言を賜わった東京大学神立誠教授, 津郷友吉教授並びに藤巻正生助教授の諸先生に厚く謝意を表する。本実験は当研究室員小野文夫, 染谷淳一郎, 城田澄子, 平山昇, 岩崎光雄, 大島明, 小野寺正敬, 成沢敏雄並びに藤田健諸君の助力により, またγ線照射は理化学研究所応用化学研究室滝沢正男先生のご協力により達成し得たものであり, 試料は中央食品株式会社の提供によったものである。なお研究費の一部はロックフェラー財団の援助によったものである。あわせて感謝の意を表する。

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