2025 年 29 巻 1 号 p. 77-84
持続的な鉄道のメンテナンス体制を構築するためには,経験により技術者個々に内在された設備メンテナンスの知識(暗黙知)の共有・継承が重要な課題の一つであるが,実際に技術者の暗黙知を調査し形式知化した事例は少ない.本研究は,技術者アンケート調査により電気転てつ機の定期検査に関わる技術者の暗黙知を直接抽出することを試みる.ロック調整と密着度調整を対象とした調査と分析の結果,ロックの調整を行うずれ量に技術者間のばらつきが存在し,特に温度変化やクセ・ガタ等の要因を考慮して,あえて大きいずれ量を残す暗黙知の存在が示唆された.また,ずれ量残しを行う技術者の割合は年齢と相関がなかったことから,既存のOJTなどではこの暗黙知が十分に伝承・共有されているとは言えず,マニュアルなどによる形式知化の必要性が示唆された.