2025 年 29 巻 1 号 p. 93-100
我が国の鋼鉄道橋の塗装塗替えは,劣化した塗膜を除去し,活膜を残して塗り重ねることが一般的である.そのため供用年数が長い鋼鉄道橋では,塗膜厚が増加し,内部応力が増加するほか,経年により塗膜が硬脆化することで塗膜に割れ・剥がれの発生が懸念されるが,塗膜の付着性および硬度を複数時期で比較した事例は少ない.そこで,1960年代に供用を開始し高頻度に塗り重ねられた鋼鉄道橋を対象に,二時期で外観調査と塗膜履歴調査,付着性評価試験の実橋調査を行うとともに,塗膜各層の押し込み硬さを室内試験で測定した.その結果,わずかに塗膜割れが確認されたが,大部分の塗膜は十分な付着力を有し,大面積での塗膜の剥がれは確認されなかった.一方で,塗膜の付着力は低下傾向にあり,最下層の鉛丹さび止めペイントが硬化傾向にあることがわかった.