洛北史学
Online ISSN : 2436-519X
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論説
羊飼いとしての異端審問官
一三、一四世紀の南フランス
轟木 広太郎
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2015 年 17 巻 p. 43-67

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抄録
異端審問は一二三〇年代に南フランスに生まれた制度だが、従来は、もっぱら異端という教会の敵を殲滅するという目的の面から考察の対象となってきた。それに対して筆者は、異端審問のこうした抑圧的な目的に裏には、異端者の魂に対する司牧的配慮が終始存在したという点を明らかにしようとした。敵を打ち破るのにその魂の救いをもってする、この一見逆説的な課題は異端審問官たちによってどのように認識され、また遂行されたのか。本稿では、異端審問制度が 創設される以前との比較を行った後に、異端審問のもとでの自白、尋問、刑罰(贖罪)といったさまざまな局面を通じて、いかに異端審問官が異端(被疑)者の身体と魂に介入しつつ、また異端者の掲げたのとは異なる救いの道を強要することによって、この課題を果たそうとしたのかを考察した。
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© 2015 洛北史学会
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