洛北史学
Online ISSN : 2436-519X
Print ISSN : 1345-5281
17 巻
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論説
  • 建中元年二月十一日起請条を中心に
    渡辺 信一郎
    2015 年 17 巻 p. 1-18
    発行日: 2015/06/06
    公開日: 2023/07/21
    ジャーナル フリー
    本稿は、唐の建中元年(七八〇)に実施された両税法の実体を再整理し、その内容と歴史的特質を考察する。両税の名称は、一年に夏秋二回の納税期限を設けて徴税することに由来する。その課税内容には、現銭もしくは銭額相当の絹帛等を折納させる両税銭と穀物を納めさせる両税斛斗の両系統があった。両税銭の納税期限は、各州の風土気候等を勘案して州ごとに設定され、三限を認めることもあった。両税銭額は、各戸の資産の等級によってきめられ、その額を一年間に二回もしくは三回の税限に分けて納入された。両税斛斗は、全国一律に六月末と十二月末の納入期限により納入された。両税斛斗は、定額指定された夏税地・秋税地からそれぞれ年一回、田土等級に応じて収穫物の五%~十%を納入させるもので、同一田土に二度課税するものではなかった。両税の特質は、「均 率」(両税銭)「均税」(斛斗)と表現されるように、両税戸の物力(資産)と田土を等級化し、負担能力に応じた差等をもうけて徴税したところにある。
  • 衣川 仁
    2015 年 17 巻 p. 19-42
    発行日: 2015/06/06
    公開日: 2023/07/21
    ジャーナル フリー
    日本中世の宗教と人々との関係はどのようなものであったのか。この問題を考察するため、本稿では平安期の訴訟関係史料に登場する「神威」と、「数百年」などと表記される安穏の歴史を素材とした。その結果、第一章では神威といった宗教的威力を恐れる表現が多用されるものの、現実にはその力が万能であったわけではないことを明らかにした。中世の人々にとっての宗教とは、自らの生活のために宗教を利用する側面と、表現通りに崇拝する神頼みとしての側面とが並存するようなものであったと考えられる。また平安期の人々は自らの死後にも祈りが継続されない可能性を不安に感じており、そのため長い安穏の歴史とい う実績を有する寺社に期待するようになっていた。しかしながらこの結びつきは宗教的な装いをすることをよしとするような思考の定型でしかなかった。中世の宗教と人々との関係を考察するには、こうした面を含む日常的な思考への目配りが必要であろう。
  • 一三、一四世紀の南フランス
    轟木 広太郎
    2015 年 17 巻 p. 43-67
    発行日: 2015/06/06
    公開日: 2023/07/21
    ジャーナル フリー
    異端審問は一二三〇年代に南フランスに生まれた制度だが、従来は、もっぱら異端という教会の敵を殲滅するという目的の面から考察の対象となってきた。それに対して筆者は、異端審問のこうした抑圧的な目的に裏には、異端者の魂に対する司牧的配慮が終始存在したという点を明らかにしようとした。敵を打ち破るのにその魂の救いをもってする、この一見逆説的な課題は異端審問官たちによってどのように認識され、また遂行されたのか。本稿では、異端審問制度が 創設される以前との比較を行った後に、異端審問のもとでの自白、尋問、刑罰(贖罪)といったさまざまな局面を通じて、いかに異端審問官が異端(被疑)者の身体と魂に介入しつつ、また異端者の掲げたのとは異なる救いの道を強要することによって、この課題を果たそうとしたのかを考察した。
  • 寺嶋 一根
    2015 年 17 巻 p. 68-92
    発行日: 2015/06/06
    公開日: 2023/07/21
    ジャーナル フリー
    多くの公家衆が揃って豊臣秀吉のもとに参集して御礼を行う「惣礼」の形態は秀吉の政治的地位の上昇にともなって変化している。天正一二年から堂上公 家衆は室町期・織田期における武家権力者との対面儀礼の先例に則り、惣礼の際に「直垂」を着用した。これは秀吉の関白就任によっても変わることはなかった。秀吉は、天正一五年以降、官位・家格を利用することで惣礼を公家・武家全体を包括する秩序編成の場に改編するとともに、儀礼空間における「衣冠化」をすすめた。こうして、豊臣政権の支配秩序に応じた服装区分は完成したが、装束から見た場合、豊臣家は摂関家の一つでしかないという問題点が残った。そこで、文禄四年にいたって、秀吉は天皇装束である「引直衣」に「唐冠」という全く新しい組み合わせで参内を行い、慶長二年には秀頼とともに惣礼の場でもこれを着用することで、豊臣家の絶対性を示すにいたったのである。
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