抄録
FT(Fault Tree)における最小カットAND構造では, 通常, 入力事象が全て生起すると出力事象が生起する.しかし, 実際のシステム故障においては, 出力事象の生起が入力事象の発生順序にも依存する例も多く, いわば最小カット優先AND構造を考慮しなければならない.本論文では, KITT, マルコフ連鎖及び多重積分による方法を用いてこの種の故障論理の定量化を検討している.まず, 入力事象が指数分布に従う共通の発生率と修復率をもつ場合において, 出力事象が任意の時刻で生起している確率と出力事象が単位時間あたりに発生する回数の統計的期待値とを求める評価式を導出し, それらがそれぞれ一致することを示している.これにより, 三つの方法が順序依存形故障の定量化に対して適切であることの必要条件が満たされた.次に, 入力事象が定数の発生率と修復率をもつ一般的な順序依存形故障論理に対する三つの方法の適用性を比較している.その結果, 現在のところ, 多重積分による方法のみが一般的な場合へ適用可能であることが示された.