抄録
校正をおこなう目的のひとつに, 校正対象が仕様の範囲内に存在するかどうかを確認するということがある.従来, この仕様の範囲内に存在するかどうかの判定基準としては校正対象の仕様の限界が用いられてきており, この基準を基にして測定点が仕様の内側にあれば合格, 外側にあれば不合格の判定がおこなわれていた.校正の対象となる測定装置にばらつきがある一方, 校正する側にもばらつきがあり, このばらつきの大きさによって測定点が仕様の範囲内にあっても範囲外であると判定したり, 測定点が仕様の外側にあっても仕様の範囲内であると判定する可能性が存在する.またその可能性の大きさも校正する側のばらつきの程度によって変わってくる.校正の有効期限が迫った装置が校正機関に送り返され, 校正がおこなわれた結果, 上述のような誤判定が惹き起こされると, 前者の場合は過去に遡って関連するデーターの信頼性を再検査することが要求されるし, 後者の場合は今後製造する製品の信頼性に影響を与えるなどの問題に発展する.本稿ではこのような問題を回避し, より信頼性の高い判定をおこなうためにはどのようなことについて考慮しなければならないか, ISO/IEC 17025の要求も紹介しながらその一解決策を紹介する.