日本信頼性学会誌 信頼性
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水系電解液を用いた低インピーダンスアルミ電解コンデンサについて(先端電子部品の信頼性)
鵜沢 滋小松 昭彦小川原 鉄志
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2002 年 24 巻 4 号 p. 276-283

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抄録

当社では,アルミ固体電解コンデンサに迫る電気的特性と実用性を有するアルミ電解コンデンサを開発し,1998年にZシリーズとして商品化した.このZシリーズの駆動用電解液には,水を主溶媒とした電解液(水系電解液)を用いている.従来,水系電解液を用いたコンデンサは,低インピーダンス特性が期待できる反面,高温条件下では,アルミニウム電極箔と水との著しい化学反応(水和反応)により短時間で急激な特性変化を起こすという欠点があった.また,開発当初に行った温度加速試験において,このコンデンサの寿命は,寿命推定に適用されるアレニウス則(2倍/10℃加速の法則)が成立せず,アルミ電解コンデンサの信頼性に最も重要な寿命の予測ができないという課題も抱えていた.これらの大きな障害により,従来のアルミ電解コンデンサ駆動用電解液は,水を少量添加することはあっても,主溶媒として使われることはあり得なかった.当社では,これらの課題を克服できれば,水系電解液の持つ高い電気伝導特性を生かして,超低インピーダンスの理想的なコンデンサを製造することができると考え,20年前より研究開発を行ってきた.その結果,溶媒として水を単独で用いた電解液でも,従来の有機溶媒を用いた電解液とほぼ同等のコンデンサ寿命特性を有することを確認した.そして,水の反応性を制御することに成功し,多くのノウハウを集積して実用性の高いアルミ電解コンデンサを開発し商品化するに至ったのである.ここでは,水系電解液を用いたコンデンサの開発について述べる.

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© 2002 日本信頼性学会
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