抄録
この20年間, 国産の衛星開発はロケットの大型化と歩調を合わせて常に先端を目指し, 大型化, 高性能化を追求してきた.衛星の打上, 運用によって得られた知見は非常に大きく, 自主技術による衛星開発のリスクは想定の範囲内にあると思われた.しかし, 「みどり」, 「みどりII」と2機連続しての運用断念を経験し, 大型衛星の開発が従来の開発手法の単純な延長線上にはないことを思い知らされた.一方海外に目を向けると, 同様に大型化を進めた商用衛星に多くのトラブルが発生していることが知られている.このような状況から, 国産衛星に限らず大型衛星の開発には従来技術の範囲を超えたリスクが存在し, 確実な開発に向け新たな取り組みが必要であることが改めて認識されている.ここでは, 衛星開発における設計・評価・レビュー及び技術蓄積の観点から現状を分析し, 特に衛星の信頼性向上のためになすべきことについて述べる.