2006 年 28 巻 3 号 p. 175-180
シリコン中に存在するドーパントは,その分布によって機能発現の源となる電位分布を形成する.透過電子顕微鏡法の一種である電子線ホログラフィーを用いると,この電位分布を2次元映像として観察することができる.この電位分布はドーパント分布によって形成されたものであるから,これはシリコンデバイス内のドーパント分布の2次元解析である.近年,電子線ホログラフィーと半導体の両方の分野の専門家の協力によって,アメリカ,ヨーロッパ,日本においてこの技術がほぼ確立し,電子顕微鏡メーカーからは性能の良いホログラフィー電子顕微鏡が発売されている.今まで困難であったドーパント分布が直視できるようになったため,この手法はシリコンデバイス開発のスピードアップ,開発コストの低減,信頼性の向上などに非常に役立つと考えられるようになった.すでにかなりの半導体メーカーはこの技術と装置を取り入れて実験を進めている.本解説では,電子線ホログラフィーの原理と技術について解説し,我々の実験結果を紹介する.さらに,シリコンをはじめとする半導体産業への有用性について議論する.