抄録
信頼性市場データは固有の信頼性を示す重要な情報源である.しかし,市場データは保証期間中にユーザより無償修理の請求により収集されることが多く,このときに収集しうるものは故障データのみである.車や複写機のように実稼働時間(走行距離,複写枚数)が暦時間と異なる製品に対しては,たとえ,全製品の販売台数と販売時点が明確になっていても,故障データのみからの信頼性特性値の推定は難しい.この一年,この難関を克服できる糸口が見つかった.この方法の解説を試みる.要点は月間の走行距離などの一定量の暦時間における実使用時間の分布型を明確にすること,そして,最尤法に基づき,尤度をガウス-エルミートなどの区分求積法により最大化することである.これにより,これまでほとんど収束せず求められなかった最尤解を求めることが可能となった.これらの結果を示す.