抄録
航空管制においては,先行する航空機が生成する後方乱気流が後続機の安全運航に影響を与えないように,航空機を重量で区分して先行機と後続機の航空機区分の組み合わせに応じて安全な最低離隔間隔(管制間隔)を設定する,後方乱気流管制方式が定められている.混雑した空港においては,管制間隔が航空機の離発着できる時間当たりの回数(滑走路処理容量)に影響することから,近年,安全性を維持しつつ航空機区分を詳細化するなどして,管制間隔を見直す RECAT(Recategorization)が欧米を中心に進んでいる.RECAT の第一段階として,従来の 4 つの航空機区分を 6 ~ 7 つに詳細化して従来よりも管制間隔の短縮が可能な後方乱気流管制方式である RECAT フェーズ 1 が導入されつつある.さらに,先行機が生成した後方乱気流が経路上に残りやすい最悪の気象条件下においても後続機の運航に影響を与えないように定められている現在の管制方式から,将来的には気象条件に応じて管制間隔を短縮する動的な管制方式の運用や,先行機と後続機の管制間隔を機種毎に設定した上でさらに動的な管制方
式を運用することが期待されている.これらの実現のためには,導入空港の就航機種や割合,交通流の特徴を踏まえた後方乱気流管制方式の最適化と同時に,その安全性評価が必要である.