日本信頼性学会誌 信頼性
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41 巻, 3 号
交通システムの安全性・信頼性
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 住谷 泰人
    2019 年41 巻3 号 p. 152-155
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/02/03
    ジャーナル フリー
     航空分野では様々な航空専用サービスを行っている.この中で安全にかかわる航空専用サービスとして管制官がパイロットに対して行う管制業務が挙げられる.航空機は,地上の管制官が行う音声中心の指示,情報共有に基づき管制業務を行うことで,パイロットは航空機を操縦し,安全かつ正確に運航することができる.管制業務において必要な航空交通の管理を行うためには,通信・航法・監視の各システムが利用される.航空交通管理とそれを支える通信・航法・監視の各システムは,全世界で飛行する航空機上で円滑に運用できるよう国際的に共通化された標準規格を必要としている.このため,国際連合の専門機関の一つである国際民間航空機関において,国際標準の規格化作業が行われている.通信関連の規格は,国際民間航空機関内の航空通信関連の会議体である通信パネル及びその傘下の各種作業部会等で,各国から専門家が参画し,策定の検討を進めている.本稿では,これらの会議構成と共に,2018 年に開催された直近の作業部会への参画に基づく情報収集結果から,国際標準規格及び関連する技術マニュアルやガイダンスの検討状況について報告する.
  • 轟 朝幸, 兵頭 知
    2019 年41 巻3 号 p. 156-163
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/02/03
    ジャーナル フリー
    世界的に世界的にみて民間航空分野における事故発生率は,近年において下げ止まり傾向にある.そのような状況や今後の航空機の発着回数の増加を鑑み,国際民間航空機関(ICAO)では,これまで以上の安全性向上を図るため締約国に対し「State Safety Programme (SSP)」を導入することを国際標準としている.本稿では,特に同プログラム中の安全指標の評価に着目し,我が国の「航空安全プログラム(SSP)」の取り組みを紹介するとともに,海外における動向についても簡単に整理する.さらに,現行の航空安全指標の評価に対し,より適切な安全評価基準の一助となることを目的として,国の安全指標別の航空事故および重大インシデントの傾向を分析する.またポアソン分布に基づく事故発生の偶然変動を考慮した航空事故リスク信頼区間の推定結果について報告する.その結果,信頼区間を設定することで,事故発生の偶然変動による見せかけ上の高い危険率に基づく判断の誤りを防止し得る可能性が示唆された.
  • 吉原 貴之, 藤井 直樹, 瀬之口 敦
    2019 年41 巻3 号 p. 164-169
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/02/03
    ジャーナル フリー
     航空管制においては,先行する航空機が生成する後方乱気流が後続機の安全運航に影響を与えないように,航空機を重量で区分して先行機と後続機の航空機区分の組み合わせに応じて安全な最低離隔間隔(管制間隔)を設定する,後方乱気流管制方式が定められている.混雑した空港においては,管制間隔が航空機の離発着できる時間当たりの回数(滑走路処理容量)に影響することから,近年,安全性を維持しつつ航空機区分を詳細化するなどして,管制間隔を見直す RECAT(Recategorization)が欧米を中心に進んでいる.RECAT の第一段階として,従来の 4 つの航空機区分を 6 ~ 7 つに詳細化して従来よりも管制間隔の短縮が可能な後方乱気流管制方式である RECAT フェーズ 1 が導入されつつある.さらに,先行機が生成した後方乱気流が経路上に残りやすい最悪の気象条件下においても後続機の運航に影響を与えないように定められている現在の管制方式から,将来的には気象条件に応じて管制間隔を短縮する動的な管制方式の運用や,先行機と後続機の管制間隔を機種毎に設定した上でさらに動的な管制方 式を運用することが期待されている.これらの実現のためには,導入空港の就航機種や割合,交通流の特徴を踏まえた後方乱気流管制方式の最適化と同時に,その安全性評価が必要である.
  • 池田 保
    2019 年41 巻3 号 p. 170-176
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/02/03
    ジャーナル フリー
     海上交通は何世紀にも亘って世界貿易を支える重要な輸送手段となっている.航海用レーダーは,船舶の衝突防止や座礁防止のため,第二次世界大戦後頃から一般商船等に搭載され,安全航行に大きく寄与してきた.その一方,港湾,海峡,河川などの船舶輻輳海域では,陸域側に配備される海上交通システムによる安全航行支援が行われている.海上交通システムにおける船舶の位置検出センサーとしてレーダーは非常に重要である.本稿は,システムの信頼性ならびに性能向上に寄与する昨今のレーダー技術の動向を解説する.
  • 田口 晴邦
    2019 年41 巻3 号 p. 177-182
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/02/03
    ジャーナル フリー
     小型高速旅客船が波浪中を航行した際に発生する激しい船体動揺により,着席していた乗客が座席から身体が浮いて,臀部から座席に落下した衝撃で腰椎を圧迫骨折するなどの事故が多発していたことから,同様の事故の再発防止に資するため,乗客が受ける衝撃を緩和する方策についての調査研究が実施された.また,遊漁船においても波浪中を航行した際の激しい船体動揺により釣り客が負傷する事故が頻発している.いずれの船種における負傷事故とも,事故の発生状況から波浪中の船体運動に伴う大きな上下加速度が原因と考えられ,乗客や釣り客の安全を確保するためには,過大な上下加速度が発生しないような運航の必要性が改めて認識されるようになった.本稿では,小型高速旅客船において安全な航行を確保するため事業者が作成する安全運航指針に着目して,過大な上下加速度に起因する乗客負傷の危険性に対する安全措置の考え方を整理するとともに,波浪中航行時に乗客負傷事故が発生した小型高速旅客船を対象に,水槽実験結果から安全運航限界速力を推定して安全運航指針作成のための基礎資料となる操船参考資料として取りまとめた取り組みを紹介する.
  • 齊藤 裕一
    2019 年41 巻3 号 p. 183-190
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/02/03
    ジャーナル フリー
     自動運転システムへの懸念の一つは,人を含めた系の安全性・信頼性にある.1900 年頃,人の移動(モビリティ)の主要な手段は,馬車から自動車に移ったが,乗り手と馬の双方が対話・コミュニケーションする能力は損なわれている.本稿では,乗り手と馬の対話の仕方に遡り,過去から現在へ,そして近い将来に向けて,モビリティにおける人を含む系,また人と機械の役割と協調を概説したうえで,自動車運転の安全性と信頼性の向上のためのシェアードコントロール技術の動向を考察する.
  • 外川 佑
    2019 年41 巻3 号 p. 191-197
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/02/03
    ジャーナル 認証あり
     脳卒中や頭部外傷といった脳損傷は,身体の麻痺のみならず認知機能など様々な側面に影響を及ぼす可能性がある.自動車運転は患者が社会復帰を果たすうえで欠かせないものであり,脳損傷後に運転を再開する場合には,脳損傷による症状で運転に影響が出ていないかについて検査・評価をすることが求められる.特に,注意機能をはじめとする認知機能の障害(高次脳機能障害)は,病院で実施されるような机上の検査では一見問題が無くとも,実車運転の場面で問題が顕在化することがある.  本稿では,高次脳機能障害の中でも右半球損傷の約 4 割に発生するといわれている半側空間無視の自動車運転上のリスクについて論じる.序論では,脳損傷と自動車運転の問題,次に半側空間無視について現段階でわかっているメカニズムや実際の医療現場での対応,運転時の問題について述べることとする.最後に,筆者が考案した USN の運転の問題を事前に検出するためのドライビングシミュレータソフトについて結果を交えて紹介し,今後への展望を述べる.
  • 髙田 哲也, 浅野 晃
    2019 年41 巻3 号 p. 198-206
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/02/03
    ジャーナル フリー
     鉄道は,長い歴史がありその積み重ねてきた経験を基に現在の安全システムを構築してきた.個々の機能にてシステムが安全になるように考えられてきており,現在のシステムは,閉そく装置,ATC 装置,連動装置,設備監視装置などが独立した縦割りの安全装置の集合体として構成されている.  企業の安全活動の概念として「Safety2.0」があり,人の注意力に頼る時代が「Safety0.0」,安全を組み込んだモノを提供する時代が「Safety1.0」,人・モノ・環境が協調して安全を確保する協調安全シス テムが「Safety2.0」である.  本稿では,まず「Safety1.0」時代として既存鉄道信号システムが安全をどのように確保してきたかを説明する.またその安全をどう評価してきたかの事例と課題を示す.その上でネットワークを基調としたシステムを,制御の本質を見据えた本質制御の観点から鉄道信号を見直し構築した「Safety2.0」の時代の協調安全システムとして統合型列車制御システムを提案し,その安全性について上述課題を考慮した評価事例を紹介する.
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