抄録
鉄道は,長い歴史がありその積み重ねてきた経験を基に現在の安全システムを構築してきた.個々の機能にてシステムが安全になるように考えられてきており,現在のシステムは,閉そく装置,ATC 装置,連動装置,設備監視装置などが独立した縦割りの安全装置の集合体として構成されている.
企業の安全活動の概念として「Safety2.0」があり,人の注意力に頼る時代が「Safety0.0」,安全を組み込んだモノを提供する時代が「Safety1.0」,人・モノ・環境が協調して安全を確保する協調安全シス
テムが「Safety2.0」である.
本稿では,まず「Safety1.0」時代として既存鉄道信号システムが安全をどのように確保してきたかを説明する.またその安全をどう評価してきたかの事例と課題を示す.その上でネットワークを基調としたシステムを,制御の本質を見据えた本質制御の観点から鉄道信号を見直し構築した「Safety2.0」の時代の協調安全システムとして統合型列車制御システムを提案し,その安全性について上述課題を考慮した評価事例を紹介する.