2014 年 52 巻 1 号 p. 68-79
本研究の目的は,片付け場面における子どもの経験内容及び育ちの過程を明らかにすることである。3歳児男児の1年間の片付け場面を観察・記録し,得られた事例を鯨岡の「人間存在の根源的両義性」(「わたし」と「私たち」の両義性)の視点から分析した。片付け場面における子どもの変容過程は,子どもの中に「わたし」と「私たち」の両側面を育む過程として捉えられた。その過程には,子どもと保育者・他児とのさまざまな関わり合いが見られ,子どもは気持ちの揺れや折り合いを経験していた。本論では,「わたし」と「私たち」のバランスを図りながら主体的に生活する3歳児の姿に着目することで,片付け場面の意義を見直す視点を示唆した。