本研究は,ある自治体の公立保育所の全保育者が参加する研修会の年次報告書を分析し,この研修会が保育スキーマの創造的発展に果たした役割を歴史的に検討した。その結果,(1)この研修会を通して創造された保育のスキーマ(年齢別保育目標・内容)は,実践を発展させる契機であったが,制約する契機にもなった。(2)この研修会は,そのスキーマの「継続的な批判的検討,その再構成を導く学習組織」であったこと,(3)特に,保育者たちは,「問題児」の事例を,他の園の保育者たちと一緒に検討することによって,新たな保育スキームが見通せるようになったこと,(4)また,彼らは,その身体的かつ情緒的なケア労働の質を高めるとともに,その子たちを養護する「暖かい対人ネットワーク」を形成していったことがわかった。
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