2014 年 52 巻 2 号 p. 294-305
2012年,台湾では,「幼児教育及照顧法」(「幼児教育とケア法」)が施行された。本法の施行により,教育行政管轄の幼稚園と社会福祉行政管轄の託児所の二元化したシステム生態が変化し,幼児教育機関も新法の施行により名称が変更された。政府もこの法変革のことを「幼托整合」(「幼保一元化」)と位置付けている。台湾における百数年の幼児教育の発展史を顧みると,日本模倣や中国等の勢力の影響で,幼児教育機関の性質や,受け入れ対象,保育者養成,カリキュラムと教育方法及び施設設備等の面では,次第に規範化されてきた。しかし,今回の政策変革の目的は,制度改革を通して,今まで築いてきた幼児教育体制に即効的な影響を及ぼすことによって,台湾の幼児教育発展の抜本的な改革をもたらすことである。本稿では,先ず台湾における幼児教育の現状を紹介し,前述の法変革の年を分岐点にして,変革前と変革後の幼児教育の発展状況についてそれぞれ検討を行う。次に,前述の政策変革が幼児教育にもたらす影響と今後解決すべき課題について考察する。