2017 年 55 巻 1 号 p. 31-42
本論文は,4歳児と他児との仲間関係形成に伴い,製作場面において幼児がモノを他児に「見せる」行為および製作過程がどのように変容するのかを検討し,模倣から「ずらし」の表現に至る造形表現過程を明らかにすることを目的とする。幼稚園4歳児クラスを1年間参与観察し,対象児1名の「見せる」行為を文脈に即して分析した。分析の結果,製作場面における幼児同士の「見せる」行為には,①相手と同じモノをつくったことを伝え,相手と「同じ」であることを確認する,②相手と同じモノをつくるために交渉し,「同じ」であることを求める,③自他のモノの「違い」を伝え,相手と自分が「違う」ことを相互に受容し合う,という変容が見られた。そして,相手と「違う」ことを受容し合う時期に,模倣だけでなく,他児の表現からアイデアを採り入れ,自己表現を行う「ずらし」の表現過程が見られた。