2018 年 56 巻 2 号 p. 18-29
本研究の目的は,カナダのオンタリオ州とブリティッシュコロンビア州における全日制幼稚園の政策過程を分析することであった。理論枠組みには,構成主義的政策過程論を用いた。その結果,オンタリオ州とブリティッシュコロンビア州のいずれも,政策提案,幼児期の学びに関するガイドラインの作成,全日制幼稚園に関する最終提言,政策決定という過程で全日制幼稚園の導入がなされていた。両州ともこの過程を通して,幼児教育の教師や州民に向けて,全日制幼稚園に関する社会的潮流を拡大したことが示唆された。さらに,オンタリオ州,ブリティッシュコロンビア州とも州最大の大学であるトロント大学,ブリティッシュコロンビア大学が政策過程に深く影響を及ぼしていたことがわかった。最後に,オンタリオ州,ブリティッシュコロンビア州の政策過程が,カナダ全域における全日制幼稚園導入の動向に関わっていた。