2018 年 56 巻 2 号 p. 39-50
本研究は,保育施設のリスクマネジメントのうち,園庭遊具に焦点をあてて,重篤な怪我のリスクを減らして,遊びの価値を最大限に発揮させる,「子どもと遊具の関わり」と「保育者の援助のあり方」を,参与観察とインタビュー調査から明らかにするものである。概念整理では,日本の遊具に関する安全基準におけるハザードとリスクの概念が,世界基準のそれと異なることを指摘し,世界基準の概念定義を用いること,すなわち,ハザードは「遊具が内在する危険性」,リスクは「ハザードから生ずるおそれのある怪我の重篤度とその発生頻度」ととらえること。そして,遊具のハザードを「遊具の本質として内在するハザード」「取り除くべきハザード」の縦軸と「子ども認知可能」「子ども認知不可能」の横軸をクロスさせた4つの象限に分けて分類することの有用性について論じた。