抄録
本稿の目的は,保育学研究のグローバルな視点を文献等から概括し,わが国の保育の展望を描出することである。大きく3点を論じた。第1にグローバル化の進展がもたらす光と影と,国際的な保育政策動向を示した。第2に,保育の質に関し,規制を超えて保育プロセスの質に関する要因の精緻な実証的検討や乳児期の保育の質議論が進展していること,また一方で保育の質で論じられる支配的言説を超える言説としての「質を超える」もう一つの言説の議論が展開していることを,我が国の状況と関連づけ論じた。そして第3に,国際比較研究としてOECD国際幼児教育,・保育従事者調査2018結果を踏まえ,日本の保育の卓越性と課題,そしてこれからの共生社会への射程を示した。