抄録
本研究の目的は,職場環境や実践経験の蓄積を通した保育施設に勤める給食職員の意識変容のプロセスを具体的に明らかにすることである。研究協力者は,現在,認定こども園の給食職員として献立作成と調理に従事するA氏である。同氏は,給食職員となる以前より,将来はなんらかのかたちで子どもと関わる仕事に就きたいという願望を抱いていた(「子ども志向」)。本研究では,A氏の約8年間のキャリアを質的に分析することで,そのなかでの意識の変容過程を描き出す。分析の結果,子どもと直接的に接する機会や専門的な挑戦を促す環境を通して,A氏の現在の実践スタンスが構築されていく過程が明らかになった。