本研究の目的は,障害のある子どもをもつ親の内面で,障害を巡って揺れ動いている心性の両面を描き出すとともに,それを支える保育環境を明らかにすることである。自閉症で知的障害のある幼児をもつ両親に,園でのエピソードを提示し,父と母それぞれが,園での姿をどのように受け止めたのかを語りから迫ることを試みた。 その結果,「障害児の親」であるとともに,障害の有無にかかわらず「この子の親」であるという,親ならではの心性に揺れ動いていることを見出した。そして,園に「我が子がいる意味」を実感することが,親にとって大きな支えとなることを明らかにした。さらに,その実感が生まれる要因となる保育環境についても言及した。