目的:断熱改修が冬季の住宅内の座位行動と身体活動に及ぼす影響を検討した。
方法:断熱改修に意欲的な成人を募集し,冬季2週間のベースライン調査(改修前)と,その1~4年後の同時期に追跡調査(改修後)を行った。住宅内の座位時間と低強度以上の身体活動量(light-to-vigorous physical activity; LVPA)は,加速度計と外出記録から評価した。断熱改修を行った介入群と断念した対照群に対象者を分け,住宅内の座位時間とLVPAの変化との関連を線形混合モデルで検討した。また,脱衣所室温変化量[低下(-1℃未満),変化なし(-1℃以上+1℃未満),上昇小(+1℃以上+5℃未満),上昇大(+5℃以上)]を説明変数に加えた解析も実施した。
結果:1,751名(介入群1,640名,対照群111名)を解析対象とした。脱衣所室温は介入群で有意に上昇したが,群間で調査期間のずれが生じたことなどにより,対照群の室温も外気温の上昇に伴い上昇していた。多変量解析の結果,断熱改修と住宅内の座位時間・LVPAの変化に有意な関連は認められなかった。ただし,脱衣所室温変化量は有意に関連していた。室温が変化しなかった場合に比べて,5℃以上改善した場合は,座位時間が減少し,LVPAは増加したが,室温が低下した場合には,座位時間が増加し,LVPAは減少した。
結論:断熱改修は住宅内の座位時間とLVPAの変化に関連していなかった。ただし,脱衣所等の室温改善は,住宅内の座位行動を抑制し,LVPAを増加させる可能性が示唆された。今後も検証が必要である。