運動疫学研究
Online ISSN : 2434-2017
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巻頭言
原著
  • 安部 孝文, 北湯口 純, 福島 教照, 鎌田 真光, 岡田 真平, 田中 千晶, 井上 茂, 武藤 芳照
    2023 年 25 巻 2 号 p. 152-162
    発行日: 2023/12/31
    公開日: 2024/07/01
    [早期公開] 公開日: 2023/05/29
    ジャーナル フリー

    【目的】本研究の目的は,行政による幼児期運動プログラム(運動プログラム)普及施策の実装プロセスを明らかにすることである。

    【方法】保育者向け運動プログラムの実装状況をPAIREMに基づき評価した。2016年から2021年の雲南市の幼保行政,保育施設,幼稚園教諭・保育士(保育者)のデータを評価に用いた。幼児の体力は,新型コロナウイルス蔓延の影響を考慮し2019年まで分析した。

    【結果】計画:「自分の子どもが心身ともに健全だと感じる保護者の割合95.0%」を目標としていた。「研修会の開催数」と「体力測定の参加園・幼児数」を各年度の目標に掲げていた。幼児の体力向上に関する目標値は設定していなかった。採用:運動プログラムは17施設で活用された。実施:保育者向け研修会が14回開催された。到達:学習教材は全保育者に配布された。研修会の実参加施設数は21施設であった。疑似保育者カバー率(延べ研修会参加者数/保育者数)は18.5%(342/1,849人)であった。効果:「体のバランスをとる動き」「体を移動する動き」「用具等を操作する動き」の各観点から幼児への援助を75.5%から90.4%の保育者が行った。幼児の体力は,2016年と比べて,2019年の年中・年長児のソフトボール投げと25m走が高かったが,年長児の立ち幅跳びが低かった。継続:今後評価予定である。

    【結論】本研究の結果,行政による研修会等を通じた運動プログラム普及施策の実装プロセスが明らかになった。今後さらなる事業の改善と推進が求められる。

  • 大垣 亮, 金 賢宰, 小倉 彩音, 中川 雄太, 嶋崎 達也, 竹村 雅裕
    2023 年 25 巻 2 号 p. 163-171
    発行日: 2023/12/31
    公開日: 2024/07/01
    [早期公開] 公開日: 2023/09/30
    ジャーナル フリー

    【目的】本邦のラグビー競技では2022年8月に脳振盪後の段階的競技復帰(Graduated Return to Play,以下GRTP)プロトコルが改訂された。本研究は男子大学生ラグビー選手を対象に外傷・障害の発生状況を調査し,脳振盪受傷後のGRTPプロトコル改訂前後での脳振盪を含む外傷・障害の発生状況を比較することを目的とした。

    【方法】1チームに所属する男性の大学生ラグビー選手101名を対象に,GRTPプロトコル改訂前(2021年9月から12月)とGRTPプロトコル改訂後(2022年9月から12月)を調査期間として,脳振盪を含む全ての外傷・障害の発生件数,脳振盪受傷後から競技復帰に要した日数,脳振盪の再発件数を記録した。ラグビーの試合および練習での曝露時間を計算し,1000時間当たりの発生率(件/1000 player-hours: 以下,件/1000 h),95%信頼区間(confidence interval: CI),Rate Ratioを計算した。

    【結果】調査期間において146件の外傷・障害が発生した。全外傷・障害の発生率はGRTP改訂前(8.9件/1000 h; 95% CI, 6.9–10.9)と比べて,GRTP改訂後(6.2件/1000 h; 95% CI, 4.7–7.6)で有意に低かった(Rate Ratio=0.67; 95% CI, 0.48–0.92)。脳振盪の発生率はGRTP改訂前(1.7 件/1000 h; 95% CI, 0.8–2.6)と比べて,GRTP改訂後(0.7 件/1000 h; 95% CI, 0.2–1.2)で有意に低かった(Rate Ratio=0.41; 95% CI, 0.18–0.92)。脳振盪の再発の割合はGRTP プロトコル改訂前が18.7%であったのに対し,改訂後は0%であった。

    【結論】男子大学生ラグビー選手において脳振盪後の段階的競技復帰プロトコル改訂前後での外傷・障害の発生状況を調査した結果,脳振盪および外傷・障害の発生率の低下が観察された。

資料
  • 田中 千晶
    2023 年 25 巻 2 号 p. 172-179
    発行日: 2023/12/31
    公開日: 2024/07/01
    [早期公開] 公開日: 2023/12/14
    ジャーナル フリー

    【目的】障害を有する子供・青少年の身体不活動は,深刻な健康問題を引き起こすリスクが高くなることに繋がる。本研究の目的は,障害を有する子供・青少年の身体活動の評価方法に関する国際的な動向の概要をまとめることである。

    【方法】障害を有する子供・青少年の身体活動に関する国際比較を行った“Global Matrix of Para Report Cards on Physical Activity of Children and Adolescents With Disabilities”に参加した14の国・地域を対象とした。各国・地域のPara Report Cardにおいて,日常生活全般の身体活動量の等級付けの根拠となっている文献を収集することにより,各国・地域の身体活動量の評価法を整理した。

    【結果】14の国・地域のうち日常生活全般の身体活動量の等級付けが行われていたのは11の国・地域で,Health Behaviour in School-aged Children (HBSC) の質問紙が最も多く用いられていた(5か国:45.5%)。HBSCの質問紙を含め,「1日60分以上の中高強度身体活動を達成した頻度」を尋ねて日常生活全般の身体活動量を評価する質問紙を利用している国が多かった(8つの国・地域:72.7%)。質問紙と加速度計による客観的な方法の両方を用いて等級付けを行っていたのは,3か国と1地域であった(36.4%)。

    【結論】11の国・地域の中で,障害を有する子供・青少年の身体活動評価法として,日常生活全般の身体活動量を評価するために,「1日60分以上の中高強度身体活動を達成した頻度」を尋ねる質問項目や質問紙(例:HBSC)が,国際的に最も頻繁に用いられていた。

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