環境政策統合の実現に際しては,ある政策領域における既存の政策目的と新たに追加される環境目的との調整過程が重要になる.本研究では,他の政策領域で環境目的が追加された事例として1997 年に行われた河川法改正に着目し,政策パラダイム転換に関する先行研究を手がかりとして,情報公開請求にて入手した公文書などにより環境政策統合の政策過程を分析した.その結果,(1)河川環境に関する2 つの異なるアイディアが存在したこと,(2)主要アクターが推進したアイディアは治水・利水を主目的とする既存政策パラダイムとより整合的なもので,政策パラダイム転換が生じていたとは言い難いことなどを明らかにした.