2019 年 12 巻 2 号 p. 19-30
生物多様性条約を中心として,長年にわたり国際的議論の的となってきた遺伝資源アクセスと利益配分(ABS)は,名古屋議定書の採択・発効や日本の国内措置「ABS指針」の施行により,改めてABSの意義や具体的な実現策が問われる段階に入っている.今後の国際的および国内的なABS政策への社会科学的基礎の提供に向け,これまで日本で先行してきた法学研究の動向を踏まえながら,「遺伝資源利用の経済理論」「遺伝資源の経済価値評価」「企業の遺伝資源利用行動」の3つの側面から経済学の先行研究の検討に基づいて今後の研究課題を展望する.