2020 年 13 巻 1 号 p. 27-41
格差や貧困の拡大と,気候危機を背景として,2018年以降,欧米では反緊縮グリーン・ニューディール(GND)が相次いで提案されている.GNDは,環境政策と経済政策を統合させた急進的な政策案である.気候変動防止のために従来提案されていたよりも,早急に炭素排出ゼロ社会への移行を実現するために,巨額の投資の実施を求めるとともに,雇用の「公正な移行」の実現と,富や人種,ジェンダー,世代などに関わる不正義の解消にも注意を払っている.また反緊縮の経済理論に基づき,資金は主に増税によってではなく,年金基金等の巨額の民間資金の誘導と,(通貨発行権を有する国々の場合は)赤字支出でまかなうことを求めている.