政策案実施か現状維持かを問う住民投票は,その政策案の実施により,便益を得るグループと損失を被るグループを生み出し,グループ間の分配に帰結する.しかし,分配に関する社会的選好が投票行動に与える影響は十分に検証されていない.本論文では,住民投票が有する戦略空間とグループ構造をもつ複数人複数グループ独裁者ゲームの実験を用いて,戦略的投票を制御した上で,社会的選好が個人の投票行動に与える影響を考察する.実験結果より,自己利得最大化と矛盾する選択割合は平均6.7%と極めて低いこと,また,金銭的インセンティブの除去,匿名性の減少,選択理由の表明により分配を考慮した選択が大幅に増加することが示唆された.