2021 年 14 巻 2 号 p. 28-37
本研究は,近年,実務主導で急速に発展している投資ポートフォリオのカーボン分析に焦点をあて,関連文献の包括的なレビューを通じて,カーボン分析のこれまでの発展史を,概念形成・任意開示・TCFD対応・新指標開発の4つの段階に分け整理を行った.さらに,カーボン分析の実施目的・指標・実務上の課題についても整理を行った.目的については運用パフォーマンス向上と環境面のインパクト創出という異なる考え方が併存する中,GHG排出量をベースとする指標から金銭価値や温度を単位とする指標まで,指標の多様化が明らかとなった.同時に,機関投資家がカーボン分析を実施する際に実務上の課題が複数存在することも浮かび上がった.