抄録
小児の顔面の成長は,小児歯科医にとっては非常に興味深いが,軟組織に関する研究は限られている。そこで,本研究は幼児の顔面における三次元形態解析を行なうための,基準座標の設定について検討した。本研究はレーザー型非接触型三次元デジタイザを用い,鹿児島市のT 保育園・幼稚園に通園する健康な4~6 歳の幼児(年齢毎に男女各20 名:計120 名)の顔面形態を計測し,得られた画像より17 の基準点について三次元座標として出力した。基準座標は,原点と平面をそれぞれ2 種類,下記の通り設定し比較検討した。原点は,1)矢状面における鼻根最底部(以下,N 点)と,2)左右内眼角点の中央(以下,内眼角中点)であり,平面は,1)N 点と左右鼻翼外側点でできる鼻の外形(以下,A 平面)と,2)左右内眼角点,左右外眼角点,左右鼻翼外側点,左右口角点の8 点による回帰平面(以下,B 平面),である。2 種類の原点を用いたときの各基準点の標準偏差および変動係数から原点を内眼角中点と決定した後に,A 平面,B 平面における矢状面および水平面のなす角度を算出した。その結果,両平面の矢状面角度は増齢的に減少する傾向があり,4 歳と6 歳の女児では有意差が認められた。この結果,顔面における基準平面の作成は,成長に伴う変化を観察する上で重要であり,事前に各計測点の特徴を考慮した上で,適切に設定する必要があることが示唆された。