環境保全における自発的な費用負担の理論として,「自発的な関与」原理が提起されている.従来,この費用負担原理の根拠としてAmartya Senのコミットメント概念が参照されてきた.本稿では,先行研究におけるSenのコミットメントの位置づけに問題があることを示し,Sen (1977) によるコミットメントの含意を踏まえると,費用負担の制度設計の基準としてではなく,現実の費用負担を分析する概念装置として位置づける必要があることを論じた.これにより,一元的な選好を前提とした枠組みでは捉えられない,自発的な費用負担に際して生じうる責任転嫁の存在を把握し,政策論的な示唆を得られることを示した.