本稿は,CO2排出制約の課せられた電力会社の生産・投資行動を理論的・実証的に分析したものである.理論分析では,日本の電力会社に対して電力の供給義務が課せられていることや,設備容量に制約があることを考慮したモデルを構築することによって,電力会社の限界削減費用関数の特徴的な形状が明らかになった.また,理論モデルをもとにした実証分析では,2001年度9電力会社のデータから,火力発電部門の燃料転換による限界削減費用や削減ポテンシャルを具体的に推計し,特に設備更新を伴う燃料転換では限界削減費用4000円/t~6500円/tで2001年度総排出量の6.4%のCO2削減が可能であることが明らかとなった.