2012 年 5 巻 2 号 p. 58-71
浸水被害に関する研究は,これまでに数多くの成果が蓄積されてきたが,(1)河川への距離や標高などを洪水リスクの代理変数として用いているために,他の外部便益や外部費用の効果を分離できていない,(2)ハザードマップを利用したリスク変数を使って分析しているものの,除外変数によるバイアスを考慮していない,などの問題があり,被害額を過小評価あるいは過大評価している可能性がある.本研究では,これらの問題に対処するために,ハザードマップを利用したリスク変数を利用し,除外変数バイアスを考慮した上で,ヘドニック地価関数を推計し,洪水リスクの価値を推計した.その推計結果から,(1)地価は,洪水リスクに直面することによって約10.24%低下していること,(2)単位面積当たりの洪水被害額は120万円/m2に上り,東京都による試算結果5万円/m2に比べて著しく大きい値となった.