抄録
環境経済・政策学会の「東アジアの環境問題」セッションでは,東アジアにおける環境悪化の実態や被害やその経済的要因の解明,環境制御のあり方に根拠を与える理論の確立と政策の提示,東アジアの環境政策の牽引者および調停者としての日本の役割が中心的課題として議論されてきた.本稿では,これらの点に関して何がどこまで明らかにされたのかを,会員が公表した文献を中心に整理した.そして今後の研究課題として,アジアに定着した成長イデオロギーに代替する持続可能な発展のあり方,および東アジアの国々が引き起こしつつある「環境悪化の国際移転」を未然防止する制度に根拠を与える理論の構築と政策,移行戦略の提示が重要となることを示唆した.