抄録
本研究は,片麻痺患者様の食事動作練習場面の座位に注目し,傾斜計を用いた端座位練習の効果を検証した.対象は7年前に重度の左片麻痺と高次脳機能障害(左半側空間無視,注意障害,認知症)を呈した男性である.標的行動を“体幹を正中位まで戻すこと”とし,ベースライン期では口頭指示のみで端座位にて食事動作練習を行った.介入期Ⅰでは音フィードバックを使用した端座位保持練習,介入期Ⅱでは椅子を使用して矢状面上の傾きを制限し練習を行った.介入期Ⅲでは介入期Ⅰと同様に練習を実施し,プローブ期はベースライン期と同様の介入を行った.結果は,ベースライン期からプローブ期へと進むにつれて,体幹の左傾斜回数が減少し,体幹が傾いても正中位への修正が可能となった.このことから,座位の修正が繰り返される度に無意識的な固有感覚からの刺激により小脳が学習をしたことが座位保持能力向上に関与したと推察される.