リハビリテーションと応用行動分析学
Online ISSN : 2759-2588
Print ISSN : 1884-2658
デイケア利用者のQOL向上に向けた試み
~行動的QOLの観点より~
田辺 尚遠藤 晃祥
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2016 年 6 巻 p. 6-13

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抄録

本研究では,当院デイケア利用中のADLの大半が受動的である利用者に対して,「行動的QOL」の考えを基に介入を行った.標的行動は『デイケア利用時の活動量の増加』と設定し,「行動的QOL」の3つのレベルを応用行動分析学の考えを用いて段階的に介入することで,デイケア利用時の活動量増加に伴い,対象者のQOL向上が可能か検討した.対象者は動作に伴う疲労感に強いマイナスイメージを持っていたため,介入にあたり,対象者に行動を促した際の返答と記憶内容を分類し,行動を促した際の返答(拒否)の行動随伴性分析を行った.分析後は,「外発的動機づけによる行動量増加期」,「外発的動機づけから内発的動機づけへの移行期」,「行動の内発的動機づけ確立期」と介入順序を設定し,全7段階に分けて実施した.介入後は,デイケアでの活動量を増加することが可能となった.また,行動に伴う動機づけが外発的なものから内発的なものに移行できたことにより,「当院のデイケア利用時」以外の「自宅」,「他の通所サービス利用時」でも対象者の行動に変化が見られ,全生活場面を通して活動量が増加し,更に自発的な発言や行動の増加が見られた.今回の結果より,応用行動分析学を用いた詳細なアセスメントと介入段階の設定を行うことで,行動的QOLの第3レベルまで向上可能であることが示唆された.

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© 2016 リハビリテーションのための応用行動分析学研究会
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