リハビリテーションと応用行動分析学
Online ISSN : 2759-2588
Print ISSN : 1884-2658
6 巻
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • ~同じ会話を繰り返す認知症患者を経験して~
    小杉田 和樹, 田辺 尚, 渡辺 ななみ, 中山 直之, 遠藤 有紗, 遠藤 晃祥
    2016 年 6 巻 p. 1-5
    発行日: 2016年
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル フリー
    本研究は,同じ会話を繰り返す認知症を呈した患者様に対し,セラピストからの対応を変えることにより会話数・会話時間に変化がみられるのか検討した.アセスメントから繰り返し話す行動は,患者様がセラピストの目を見ながら会話し,返答に対して笑顔となる様子が観察されており,セラピストの注目量のばらつきにより会話内容に偏りが出ているのではないかと考えた.さらに注目の中でも,①頷き,②目線を合わせる,③目線の高さを合わせる,④返答数が関与していると推察した.介入方法は各期6日間実施し,会話の中でも割合の多かった2つの会話内容に対し,介入期Ⅰでは,『頷き有り』・『目線合わせ有り』は継続し,『目線の高さ合わせ無し』と『返答数は一言(減少)』とし,注目量を減少させた.介入期Ⅱでは,『頷き無し』・『目線合わせ無し』・『目線の高さ合わせ無し』・『返答数は「そうなんですね(消去)」のみ』とし,注目量を更に減少させた.その結果,繰り返しの多い会話内容の会話数・会話時間は,介入期Ⅰで変化は見られなかったが介入期Ⅱでは減少し,反対に繰り返しの無い会話内容に増加がみられた.これらのことから,認知症者の同じ話を繰り返す行動は,対応者からの注目によって維持されている可能性が示唆された.
  • ~行動的QOLの観点より~
    田辺 尚, 遠藤 晃祥
    2016 年 6 巻 p. 6-13
    発行日: 2016年
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル フリー
    本研究では,当院デイケア利用中のADLの大半が受動的である利用者に対して,「行動的QOL」の考えを基に介入を行った.標的行動は『デイケア利用時の活動量の増加』と設定し,「行動的QOL」の3つのレベルを応用行動分析学の考えを用いて段階的に介入することで,デイケア利用時の活動量増加に伴い,対象者のQOL向上が可能か検討した.対象者は動作に伴う疲労感に強いマイナスイメージを持っていたため,介入にあたり,対象者に行動を促した際の返答と記憶内容を分類し,行動を促した際の返答(拒否)の行動随伴性分析を行った.分析後は,「外発的動機づけによる行動量増加期」,「外発的動機づけから内発的動機づけへの移行期」,「行動の内発的動機づけ確立期」と介入順序を設定し,全7段階に分けて実施した.介入後は,デイケアでの活動量を増加することが可能となった.また,行動に伴う動機づけが外発的なものから内発的なものに移行できたことにより,「当院のデイケア利用時」以外の「自宅」,「他の通所サービス利用時」でも対象者の行動に変化が見られ,全生活場面を通して活動量が増加し,更に自発的な発言や行動の増加が見られた.今回の結果より,応用行動分析学を用いた詳細なアセスメントと介入段階の設定を行うことで,行動的QOLの第3レベルまで向上可能であることが示唆された.
  • 大口 明子, 釣 洋介, 山本 祐太, 大口 拓也, 遠藤 晃祥
    2016 年 6 巻 p. 14-18
    発行日: 2016年
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル フリー
    本研究は,食事のペーシング障害が見られる認知症高齢者に対し食行動の改善を試みた.食事の中で問題点を嚥下の期に分けて評価した上で,摂食速度の速さを咀嚼回数の少なさと捉え,1口ごとに10回以上咀嚼する行動の獲得を目標に,プロンプト・フェイディングと強化子を用いた新たな随伴性の確立による介入を行った.対象はレビー小体型認知症の90代女性であり,摂食速度が速いため食形態が制限されていたが,食形態の向上を望んでいた方である.介入Ⅰ期では,食事前にプロンプトとして口頭とポスターにより「1口ごとに10回噛む」ことを指示し,食後に賞賛と食事の中で10回以上噛めた割合を示すグラフの提示を行った.介入Ⅱ期はプロンプトと後続刺激を除去した.結果,介入2日目より平均咀嚼回数10回,10回以上咀嚼される割合も70%を超え,介入終了時,食形態向上に成功した.明確な指示と後続刺激の提示により,行動生起がスムーズに行われたと考えられる.
  • 大口 拓也, 釣 洋介, 赤木 厚美, 井上 翔太郎, 遠藤 晃祥
    2016 年 6 巻 p. 19-23
    発行日: 2016年
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル フリー
    本研究では,ADL場面で更衣動作が全介助されている認知症高齢者に,応用行動分析学による介入で上衣(前開き服)の更衣動作獲得を試みた.対象は必要な身体機能は有しているものの更衣動作が行えず介助されている認知症の90代男性である.動作観察にて,動作を遂行できない場面を特定することで更衣動作を6相の部分動作に細分化し,「上着を着ましょう」の口頭指示のみで6つの全ての動作が生起されることを標的行動と設定した.介入Ⅰ期では順行チェイニングの技法を用いて標的行動の獲得を図り,介入Ⅱ期では賞賛の除去を行った.これにより最終的には「上着を着ましょう」の口頭指示のみで6相の動作が連鎖化して生起し,更衣動作の獲得に至った.また対象者の視野に入りにくい位置で遂行する動作では,特に多く介助を要したことから,自身が介助されている様子も視覚情報としてプロンプトになっていた可能性が考えられ,認知症者の動作生起は,視覚刺激に大きく依存していると示唆される.
  • -構音障害を呈したパーキンソン病患者における検討-
    山﨑 正啓, 山﨑 裕司
    2016 年 6 巻 p. 24-26
    発行日: 2016年
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル フリー
    今回,構音障害を呈したパーキンソン病患者に対して声量のフィードバックを用いた行動分析学的発声練習を実施した.対象は61歳の男性.Yahrの重症度分類はⅣ.入院時,会話の声量は低く,他者から頻回に聞き返される状態であった.言語聴覚療法中の日常会話(10分)および母音の発声練習時(反復回数5回)の声量を騒音計によって測定した.そして,声量のフィードバックと言語的賞賛によって発声行動を強化した.介入中は日常会話時,発声訓練時ともに声量の増大を認めた.発声訓練時の最大声量と最少声量は,フォローアップ期においても高値を示した.以上のことから,今回の行動分析学的介入は訓練中の声量を増大させるうえで有効に機能したものと考えられた.
  • 最上谷 拓磨, 大森 圭貢, 佐々木 祥太郎, 多田 実加, 大宮 一人
    2016 年 6 巻 p. 27-30
    発行日: 2016年
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル フリー
    頻脈と身体活動制限を呈した飲水量不足の一症例に,飲水量の増加と車椅子自走自立への応用行動分析学的介入を行った.女性皮膚筋炎患者1名で,移動は車椅子全介助であった.車椅子移動の自立を目的に,200mの自走を目標として理学療法を開始した.練習2日目の運動前後の脈拍数は140から154bpm,125m駆動の所要時間は690秒であり,200mの自走はできなかった.1日の飲水量は650mlで,「トイレが近くなる」と訴え飲水を控えていた.飲水の必要性と効果,飲水量目標を説明し,飲水量のグラフ提示と増加時に賞賛をした.飲水量は,容器に残量を記し,変化を把握しやすいようにした.車椅子自走には,目標距離を段階的に設定し,距離のグラフ提示と増加時の賞賛を行った.飲水量は練習8日目に1,050mlに増加し,その後も維持された.練習10日目の運動前後の脈拍数は118から130bpm,125m駆動の所要時間は372秒,11日目には200m車椅子自走を獲得した.本介入は,飲水行動を強化し,車椅子自走獲得に寄与した可能性がある.
  • 中山 直之, 田辺 尚, 山本 祐太, 北村 明子, 遠藤 晃祥, 森元 良太, 小杉田 和樹
    2016 年 6 巻 p. 31-53
    発行日: 2016年
    公開日: 2024/04/01
    ジャーナル フリー
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