実験音声学・言語学研究
Online ISSN : 1883-6763
設立記念大会
ホトトギス・ウグイスの語形と鳴き声の音形
橋本 修
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2009 年 1 巻 p. 30-38

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抄録

実験が日本語史研究に貢献できる可能性を持つ一例として、「ホトトギス・ウグイスの語形(言語音形)は現在の形よりも遡及形のほうが、鳴き声の音形に相対的に似ていると言うことができ、これが、この2語が鳴き声を起源としている(写音語である)ことの証拠になるのではないか」ということを論じる。

遡及形のほうが相対的に鳴き声に似ていると見なされる具体的な第一点はアクセントで、鳴き声音形における最もピッチの高い部分に、遡及形の高アクセント部(原則1モーラ)が対応する、という形をとる。文献や現代のアンケート調査により、母語話者の「ホトトギス・ウグイスの語形が鳴き声を写したものである」という意識は上代・中古のほうが強く、現在では低い可能性が高いが、これは現在に至る過程でアクセント変化が起こり、高アクセント部の位置と鳴き声の高い分節の位置が対応しなくなったためと考えることが可能である。また、鳴き声音声の最も高い分節に対応するモーラだけがacuteな母音で現れるのも写音語説を補強する現象である。

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