本稿では意味範疇が文の文法性に関与することについて、有生性、特にヒト名詞を特徴づける意味範疇[±人間]を取り上げ、事象関連電位(ERP)による実験言語学的方法にもとづいて検証を行った。20名の被験者で視覚刺激による実験を行った結果、[-人間]の特徴を持った意味的逸脱に対して、12名の被験者からN400と呼ばれる意味的逸脱に関わる成分を検出した。本稿の実験結果から有生性が文の文法性に関与する意味的制約として機能していることが脳科学的実在として確認された。同時に、この結果は有生性が単純な二値的対立ではなく[+人間]が[-人間]に対して優勢的であるという非対称性をもって文法性判断に関与していることを示唆している。